月尾ボクシングジム物語
本条克明のボクシング小説を収録。
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26 スピードでパワーファイターに勝つ 第六章
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2019年3月3日日曜日
アグレッシブな防御(3)
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いまが勝機だ――
カツオはそう判断した。
烈に体ごと押し込まれ、ロープを背にしているが、攻撃の手はとめない。左右のショートフックを連打する。
密着されているためストレートパンチを打つことはできないが、ずっと攻勢だった。烈は反撃してこない。ダメージが深くて反撃する力がない証拠だ。
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2019年3月2日土曜日
アグレッシブな防御(2)
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リングのほぼ中央で、カツオと烈が接近した。
カツオがワンツーを放つ。
烈のX字型のブロックに当たった。
まだダメージが残っているのか、ブロックしたにもかかわらず烈の足がふらついた。
滝本トレーナーが声をあげる。
「いいぞ、カツオ! たたみかけろ!」
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2019年3月1日金曜日
アグレッシブな防御(1)
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アグレッシブな防御
青コーナーの滝本トレーナーが、声をはりあげた。
「カツオ、一気にたたみかけろ! 相手が回復する前に勝負を決めるんだ!」
それとほぼ同時に、星乃塚も声をあげた。
「カツオ、サークリングして距離をとれ! ガードの上からでもかまわねぇ、おまえの得意なストレートパンチを当てろ!」
異なるふたつの指示がとびかった。
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2019年2月27日水曜日
勝機はまだつづいている
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勝機はまだつづいている
「た、立ちましたよ!」
俊矢は動揺をあらわにして言った。
「あんな倒れ方をしたのに、大賀選手、立ちあがりましたよ!」
星乃塚と霧山は言葉を返さない。
驚きのあまり言葉がでてこなかったのだ。
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2019年2月26日火曜日
異なるスピードの概念(3)
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「
「
よっしゃあ!
」
」
見学者のふたり――誠一と賢策は、ガッツポーズをとった。
いつもはクールな賢策が興奮をあらわにしている。
「カツオ、すごいぞ! 自分を打ちまかした相手を一瞬で倒すなんて!」
「ほんとに、一瞬だった!」
応(こた)える誠一の声も、すっかり興奮しきっている。
「俺には音しか聞こえなかったけど、カツオのパンチが電光石火(でんこう・せっか)で決まったのはわかった!
すごいスピードだ! そして、すごいボクシングだ!」
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2019年2月25日月曜日
異なるスピードの概念(2)
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ニュートラル・コーナーで待機しているカツオは、目をみはっていた。
倒れた!
あの大賀選手が、オレのパンチで本当に倒れた!
このコンビネーションが決まれば、絶対に倒せると思っていた。
だが、実際に大賀烈が倒れている姿を見ると、『信じられない』というのが正直な気持ちだった。
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2019年2月24日日曜日
異なるスピードの概念(1)
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異なるスピードの概念
烈は、大の字になって倒れている。
「そうか!」
俊矢は興奮し、思ったことがそのまま声にでた。
「カツオさん、このパンチを練習していたのか!」
霧山が、俊矢に視線を向けた。
「俊矢には、いまのパンチが見えたのか?」
「はい。すごく速いパンチでしたけど、見えました。変則的なワンツー・パンチが」
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2019年2月23日土曜日
いや、これでいいんだ
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いや、これでいいんだ
闘いがはじまった。
カツオと烈はそれぞれコーナーからでて、リングのほぼ中央で向かい合う。
カツオが左の拳(こぶし)を前にさしだした。
それに呼応(こおう)するかのように烈も左の拳を前にだし、グローブを合わせる。
カツオが跳(と)びのくようにして距離をとった。
フットワークを使い、烈の周囲を高速で移動する。
練習生たちが、おおっ、と驚嘆(きょうたん)の声をあげた。
「は、速(はえ)ぇ! なんてスピードだ!」
「すげぇ! 前回よりもスピードアップしてるぞ!」
「早送りの映像を観(み)てるみたいだ!」
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2019年2月22日金曜日
開始から1分以内が勝負だ!
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開始から1分以内が勝負だ!
カツオと烈は、ヘッドギアとノーファールカップを装着し、14オンスのグローブをはめて、リングにはいった。
前回と同様、カツオが青コーナー側、烈が赤コーナー側に陣をとる。
カツオのセコンドに滝本トレーナー、烈のセコンドには片倉会長が、それぞれついている。
レフェリー役として、月尾会長がリングにはいった。
これで、スパーリングの準備は整った。
次のラウンドの開始ブザーとともに、スパーリングが開始される。
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2019年2月21日木曜日
白熱の予感(3)
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と、そこへ、ひとりの練習生がやってきた。
「会長。練習を見学したいという人がふたり、きてますが」
月尾会長はこまった顔になった。
「このタイミングで見学か……まいったな、誰も練習してないぞ」
「いや、ちょうどいいと思いますよ」
星乃塚が言った。
「これから、ふだんなら絶対に見られないものがはじまるんですからね。その運のいい連中に、今日のスパーを見せてやりましょうよ」
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2019年2月20日水曜日
白熱の予感(2)
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ジムに着くと、神保(じんぼ)マネージャーが出迎えるようにしてやってきた。
「大賀くんたちは予定よりも10分から20分くらいおくれるそうです。先方(さきかた)と時間が合うように、ゆっくり準備してください」
「わかりました」
カツオは更衣室へ行き、トレーニングウェアに着替えた。
集中力を高めながら、練習場へ移動する。
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2019年2月19日火曜日
白熱の予感(1)
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第六章
白熱の予感
カツオは自転車に乗り、家をでた。
陽(ひ)が落ちはじめている。
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