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アグレッシブな防御
青コーナーの滝本トレーナーが、声をはりあげた。
「カツオ、一気にたたみかけろ! 相手が回復する前に勝負を決めるんだ!」
それとほぼ同時に、星乃塚も声をあげた。
「カツオ、サークリングして距離をとれ! ガードの上からでもかまわねぇ、おまえの得意なストレートパンチを当てろ!」
異なるふたつの指示がとびかった。
カツオは、滝本トレーナーの指示にしたがった。
担当トレーナーの指示を尊重(そんちょう)したのと、カツオ自身もおなじ判断だったからだ。
カツオはニュートラル・コーナーから駆けだし、烈に向かっていく。
赤コーナーの片倉会長が、「ファイトタイプEだ!」と、くり返し叫んでいる。
烈がクロス・アームブロックの構えをとった。
――そして、前へでてきた。
練習生たちが、驚愕(きょうがく)の声をあげる。
「ぜ、前進してるぞ!」
「ダメージがあるはずなのに、逃げずに向かってくるのか!」
「前にでてきた!」
俊矢は目をみはった。
「あんなダウンをしたあとなのに、打ち合うつもりなのか!?」
「いや、ちがう!」
霧山が声をあげた。
「あれは、防御だ!」
「えっ!」
俊矢は驚き、霧山の顔を見た。
霧山は険(けわ)しい表情でリングを見つめている。
代わって、星乃塚が言った。
「そう、あれは防御だ! 攻撃的な――アグレッシブな、防御だ!」
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