**********
勝機はまだつづいている
「た、立ちましたよ!」
俊矢は動揺をあらわにして言った。
「あんな倒れ方をしたのに、大賀選手、立ちあがりましたよ!」
星乃塚と霧山は言葉を返さない。
驚きのあまり言葉がでてこなかったのだ。
「立っただと!?」
滝本トレーナーは驚愕(きょうがく)し、わが目をうたがった。
完全に大の字だった。意識をうしなっているように見えた。
しかし、大賀烈は立ちあがった。
「彼は、化け物(ばけもの)なのか!?」
誠一と賢策は、あ然となっていた。
誠一が、つぶやきもらすようにして言う。
「うそだろ、立つのかよ……決まったと思ったのに」
賢策は、目をみはっている。
「僕には完全にのびているように見えたよ。あの状態から立ちあがるなんて……さすがにあれは、人間ばなれしてないか!?」
立ったか!
カツオはいつでも闘いを再開できるように、ニュートラル・コーナーで構えをとった。
さすが大賀選手だ、簡単には勝たせてくれない。でも、立ったからといってダメージが回復したわけじゃない――
カツオの勝機はまだつづいていた。
レフェリー役の月尾会長が、
「できるか?」
と烈に声をかけた。
烈は、月尾会長を押しのけてカツオのもとへ向かおうとする。
「ま、待て!」
月尾会長は、はやる烈の前に立ちはだかった。
いまの烈の行為で、烈は戦意をうしなっていないことが明白になった。
月尾会長は自身のシャツを使って烈のグローブをふき、そして、道をゆずるようにして脇(わき)にしりぞいた。
「ファイト!」
月尾会長のかけ声とともに闘いが再開された。
赤コーナーの片倉会長は、呆然(ぼうぜん)となっていた。
烈が立ちあがった――それは信じられない光景だった。
片倉会長は、レフェリーが発した「ファイト」の声を聞いてはっと我(われ)に返った。
手にもっていたタオルを床(ゆか)に投げすて、声をはりあげる。
「烈! ファイトタイプEだ! Eで乗り切れ!」
続きを読む