2019年2月27日水曜日

勝機はまだつづいている

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勝機はまだつづいている



「た、立ちましたよ!」
 俊矢は動揺をあらわにして言った。
「あんな倒れ方をしたのに、大賀選手、立ちあがりましたよ!」

 星乃塚と霧山は言葉を返さない。
 驚きのあまり言葉がでてこなかったのだ。


「立っただと!?」
 滝本トレーナーは驚愕(きょうがく)し、わが目をうたがった。
 完全に大の字だった。意識をうしなっているように見えた。
 しかし、大賀烈は立ちあがった。
「彼は、化け物(ばけもの)なのか!?」


 誠一と賢策は、あ然となっていた。

 誠一が、つぶやきもらすようにして言う。
「うそだろ、立つのかよ……決まったと思ったのに」

 賢策は、目をみはっている。
「僕には完全にのびているように見えたよ。あの状態から立ちあがるなんて……さすがにあれは、人間ばなれしてないか!?」


 立ったか!
 カツオはいつでも闘いを再開できるように、ニュートラル・コーナーで構えをとった。
 さすが大賀選手だ、簡単には勝たせてくれない。でも、立ったからといってダメージが回復したわけじゃない――

 カツオの勝機はまだつづいていた。


 レフェリー役の月尾会長が、
「できるか?」
 と烈に声をかけた。

 烈は、月尾会長を押しのけてカツオのもとへ向かおうとする。

「ま、待て!」

 月尾会長は、はやる烈の前に立ちはだかった。
 いまの烈の行為で、烈は戦意をうしなっていないことが明白になった。
 月尾会長は自身のシャツを使って烈のグローブをふき、そして、道をゆずるようにして脇(わき)にしりぞいた。

「ファイト!」

 月尾会長のかけ声とともに闘いが再開された。


 赤コーナーの片倉会長は、呆然(ぼうぜん)となっていた。
 烈が立ちあがった――それは信じられない光景だった。

 片倉会長は、レフェリーが発した「ファイト」の声を聞いてはっと我(われ)に返った。
 手にもっていたタオルを床(ゆか)に投げすて、声をはりあげる。
「烈! ファイトタイプEだ! Eで乗り切れ!」

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