月尾ボクシングジム物語
本条克明のボクシング小説を収録。
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26 スピードでパワーファイターに勝つ 第六章
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2019年3月26日火曜日
いつの日か、プロのリングで
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いつの日か、プロのリングで
カツオは烈と片倉会長を見送るため、ジムの玄関に向かった。
カツオのかたわらには、滝本トレーナー、月尾会長、神保マネージャーの3人が付きしたがっている。
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2019年3月25日月曜日
カツオに伝えたかったんだ(2)
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神保マネージャーがカツオのもとへやってくる。
「マネージャー、はやくあの話をしてやってくれ」
と星乃塚は急(せ)かしたが、神保マネージャーはふてぶてしいまでに落ち着き払っている。
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2019年3月24日日曜日
カツオに伝えたかったんだ(1)
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カツオに伝えたかったんだ
カツオがリングをでると、練習生たちにとりかこまれた。
たくさんの賛辞(さんじ)を浴びながら、グローブとヘッドギアをはずしてもらう。
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2019年3月23日土曜日
勝つとは(2)
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どよめきが起こった。
大賀烈が、ロープをつかんで立ちあがろうとしている。
た、立つのか……!?
ニュートラル・コーナーで待機しているカツオは、驚愕(きょうがく)し、目をみはった。
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2019年3月22日金曜日
勝つとは(1)
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勝つとは
「カツオのやつ、やりやがった!」
滝本トレーナーは声をあげて感嘆(かんたん)した。
「強靱(きょうじん)なボディをほこる大賀選手を1発で倒しやがった! まったく、たまげたやつだぜ!」
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2019年3月20日水曜日
勝負強さ(3)
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カツオは、コーナーを背負(せお)った。
烈が、間合いを詰めるべく前進しようとする。
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2019年3月19日火曜日
勝負強さ(2)
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「なるほど、そういうことか」
赤コーナーの片倉会長は、敵の思惑(おもわく)を読みとった。
おもわず笑みがこぼれる。
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2019年3月18日月曜日
勝負強さ(1)
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勝負強さ
第3ラウンド開始のブザーが鳴った。
両コーナーからカツオと烈が進みでて、リングのほぼ中央で対峙(たいじ)する。
カツオが速いフットワークを使ってサークリングをはじめた。
烈はクロス・アームブロックの構えで前進し、カツオに迫(せま)っていく。
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2019年3月17日日曜日
カツオの直感(2)
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赤コーナーにもどってきた烈は、困惑をあらわにしていた。
「なぜあんなに動けるんだ!? おれの全力のパンチがまともにヒットした。手応(てごた)えもあった。なのに、なぜだ!」
「落ち着け、烈!」
片倉会長は語気を強くして諭(さと)した。
「おまえのパンチはたしかに効いてる! 彼はもう体力の限界を超えている。いまは気力だけで動いているような状態だ。しかし、そんな状態じゃ長くはもたない。動けるのはせいぜいあと1ラウンドだ」
「…………」
烈は口をとざしている。
しかし、その表情はだいぶ落ち着きをとりもどしていた。
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2019年3月16日土曜日
カツオの直感(1)
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カツオの直感
「最大のピンチを乗り切ったな」
星乃塚は安堵(あんど)のため息をもらし、誠一と賢策を見やった。
「あの見学者たちが奇跡を呼び起こした。どうやらあのふたり、カツオの知り合いみたいだな」
「そうですよ」
俊矢は言う。
「あの人は誠一さんです。カツオさんの幼なじみで、カツオさんがもっとも信頼している人です」
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2019年3月15日金曜日
力の解放(3)
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「なんだ、この状況は!?」
片倉会長は困惑(こんわく)した。
スパーリングはいつもよそのジムに出向いておこなってきた。アウェイでやることには慣れていた。
だが、こんなふうにジム全体が一丸(いちがん)となる状況など経験がなかった。
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2019年3月14日木曜日
力の解放(2)
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烈が、ニュートラル・コーナーから進みでた。
クロス・アームブロックで構え、カツオに向かっていく。
誠一と賢策のシュガーKコールが、ジムに響き渡っている。
カツオは前進した。
コーナーから抜けださなければならないため、とうぜんの行為なのだが、その姿はみずから倒されにいくかのように見えた。
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2019年3月13日水曜日
力の解放(1)
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力の解放
練習生たちが、うおおっ、と驚嘆(きょうたん)の声をあげた。
「立った! カウントぎりぎりで立ったぞ!」
「さすがにもうダメかと思ったぜ! 信じられねぇガッツだ!」
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2019年3月12日火曜日
心は燃えていても……(2)
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「カツオさん、立って! はやく立ってください!」
俊矢は声をはりあげた。
「よせ、俊矢!」
霧山が叱責(しっせき)するようにして制止した。
「いまのカツオに『立て』というのは、むごすぎる」
「そのとおりだ」
星乃塚が言う。
「カツオは立たないんじゃねぇ。立てないんだ」
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2019年3月10日日曜日
心は燃えていても……(1)
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心は燃えていても……
「ワン、ツー、スリー」
レフェリー役の月尾会長がカウントをとっていく。
カツオは片膝(かたひざ)をついた姿勢のまま、頭をかるく左右に振った。
だいじょうぶだ、頭痛はさほどない。意識もはっきりしている。
カツオは立ちあがろうとした。
そして、愕然(がくぜん)となった。
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2019年3月9日土曜日
また決まるかどうか(2)
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「それはどういう……あっ!」
俊矢は気づいた。
「カツオさんが、コーナーを背負(せお)ってる!」
前のラウンドは、背負っていたのはロープだった。
しかしいまは、コーナーポストを背にしている。
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2019年3月8日金曜日
また決まるかどうか(1)
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また決まるかどうか
ラウンド開始のブザーが鳴った。
闘いが再開される。
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2019年3月7日木曜日
作戦ミスなんて結果論だ
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作戦ミスなんて結果論だ
誠一と賢策は、ゴングと同時にふうっと息をついた。
賢策が驚嘆(きょうたん)して言う。
「すごいな、これがボクシングなのか……正直、こんなにもハードだとは思わなかったよ」
「いや、これは特別だ――」
誠一は言う。
「こんな壮絶(そうぜつ)な闘いは、プロの試合でもそうそうあるもんじゃない。さすがカツオにボクシングをあきらめることを考えさせた男だ。想像をはるかにうわまわる強敵だ!」
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2019年3月5日火曜日
密着しているときは下にはいり込むほうが有利(2)
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「ああ、カツオ……」
滝本トレーナーは、自分の指示がまちがっていたことに気づいた。
星乃塚や俊矢の指示のほうが正しかった。
フットワークを使って距離をとるべきだった。
接近されたらクリンチして仕切り直すべきだった。
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2019年3月4日月曜日
密着しているときは下にはいり込むほうが有利(1)
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密着しているときは下にはいり込むほうが有利
「打ってきた!」
俊矢は驚きの声をあげた。
「もう少しでレフェリーストップになりそうだったのに、あそこから反撃してきた! なんてしぶといんだ!」
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