ラベル 21 スピードでパワーファイターに勝つ 第一章 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
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2018年10月19日金曜日

このスパーは、おそらくアレだ(3)

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 カツオは青コーナーに立ち、ラウンド開始のブザーを待ちながら、滝本トレーナーがさっきから何も言わないことを不思議(ふしぎ)に思っていた。
 いつもなら、作戦や闘い方を事細かく指示してくるのに……。

2018年10月17日水曜日

このスパーは、おそらくアレだ(2)

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 俊矢はビデオカメラを手に、リングのそばに立った。
 カツオと大賀烈はすでにリングにあがっており、カツオは青コーナー側、烈は赤コーナー側で待機している。
 ボクシングでは格上の選手が赤コーナー側につくのが一般的で、今回のスパーリングもその慣習にしたがっていた。

 対戦する両者のほかにもうひとり、月尾会長がリングにはいっている。レフェリーをするためだ。
 通常のスパーリングであればレフェリーはいないのだが、今回は試合形式でおこなうため、月尾会長がその役目を担当する。

 カツオのいる青コーナーには滝本トレーナーが、大賀烈の赤コーナーにはエムビージムの片倉会長が、それぞれセコンドについている。

2018年10月16日火曜日

このスパーは、おそらくアレだ(1)

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このスパーは、おそらくアレだ



 それからシャドーボクシングを2ラウンドやったのち、カツオと大賀烈はスパーリングの準備にとりかかった。

 ノーファールカップ(金的を守る防具)を装着する。
 顔にワセリンを塗り、ヘッドギアを着け、マウスピースをはめる。
 ここまでは自分ひとりでできるが、グローブは手をいれた状態で紐(ひも)を結ばなければならないため、他者に装着してもらうことになる。
 烈のグローブはエムビージムの片倉会長が、カツオのグローブは滝本トレーナーが装着をしている。

2018年10月10日水曜日

このスパーリングは倒すか倒されるかの真剣勝負だ!(3)

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 カツオが鏡の前でフォームチェックのシャドーボクシングをやっているとき、件(くだん)の待ち人はやってきた。

 月尾会長に案内されて、ふたりの男が練習場にはいってくる。
 ひとりは角張った顔立ちの中年男性で、巌(いわお)のようなごつい体つきをしている。
 白いポロシャツを着ていて、胸もとに『エムビーフィットネスクラブ』の刺繍(ししゅう)がほどこされている。

 もうひとりは、Tシャツに、赤いジャージのハーフパンツ姿の若者で、両手にはすでにバンデージが巻かれている。
 ――彼が、大賀烈にちがいない。

2018年10月9日火曜日

このスパーリングは倒すか倒されるかの真剣勝負だ!(2)

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 カツオは更衣室で着替えをすませ、練習場へでた。
 拳(こぶし)にバンデージ(包帯)を巻いていく。
 いつからそうなったのかはわからないが、『バンデージを巻くのは更衣室ではなく練習場で』というのが月尾ジムの慣習だった。

 練習場では、すでにプロの選手や練習生たちが練習をはじめている。
 熱のこもったひとりひとりの練習が真夏の暑さに拍車(はくしゃ)をかけ、ジムに活気を与えていた。

2018年10月6日土曜日

このスパーリングは倒すか倒されるかの真剣勝負だ!(1)


第一章




このスパーリングは倒すか倒されるかの真剣勝負だ!



 最初から無礼な男だった。
 初対面だというのに、上目(うわめ)づかいでカツオをまっすぐ睨(にら)みすえたまま視線をそらさない。
 刃物のようにギラギラ輝く眼光――まるでにくい敵(かたき)を見るような目だ。

 そして、この態度、この言葉、この挑発……。

 上等だよ!
 そっちがその気なら、やってやる!

 カツオは、ふつふつと戦意がわきあがってくるのを感じた。
 燃えたぎる闘志によって、身震いするほど心身が高揚している。

 そうだ、これは練習なんかじゃない! 実戦だ!
 倒すか倒されるかの真剣勝負だ!