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スピードで、攻撃を防御に変える
カツオと俊矢は、マスボクシングの準備を整えた。
スパーリングのときとおなじように、ヘッドギアとノーファールカップを着用し、マウスピースをはめる。
グローブは、マジックテープで簡単に脱着ができるものを使用。もちろん試合用のグローブよりも大きい。
マスボクシングはかるい打撃でおこなうとはいえ、練習では怪我をしないように細心の注意を払わなければならないのだ。
カツオと俊矢は、リングにあがった。
「俊矢には、大賀選手の構え方と、大賀選手のステップワークで、間合いを詰めてきてほしいんだ」
カツオは、大賀烈の構え方とステップワークについて説明した。
クロス・アームブロックは、教えるまでもなく、俊矢はすぐにそのかたちを再現してみせた。あのときのスパーリングを観(み)ていたので、構え方と用法はわかっていたのだ。
つづいて、烈が使ったサークリングを封じるテクニック――ショートカット・ステップについて説明した。
カツオの説明を聞き終えた俊矢は、感嘆(かんたん)のため息をもらした。
「なるほど……そんなテクニックを使っていたんですね」
「それじゃ、オレはフットワークを使ってサークリングをするから、俊矢はいま教えたテクニックを使って距離を詰めてきて。パンチは打たなくていいよ。と言っても、その構え方だと打てないけどね。
接近されてしまったら、その時点でオレのまけだ。
――それじゃ、やってみようか」
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