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星乃塚と霧山は、カツオの家に着いた。
呼び鈴を押すと、カツオのお母さんがでてきた。
星乃塚が、月尾ジムの者でカツオに渡したいものがあって会いにきた旨(むね)を伝えると、カツオのお母さんは家のなかへもどっていった。
玄関で待つこと十数秒――
2階からバタバタと走りおりてくる音をたてて、カツオが星乃塚たちの前にあらわれた。
「星乃塚さん! それに霧山さんも! どうしたんですか!?」
よほど意外だったのか、カツオは目を丸くしている。
「夜分(やぶん)にすまんな」
言って、星乃塚はディスクをカツオに向けてさしだした。
「滝本さんに頼まれちまってな。こいつをカツオにとどけにきたんだ」
「これは?」
「このあいだのスパーだ。俊矢が録画してくれてただろう。あれをコピーしたやつだ」
「えっ!?」
「まあ、いまはまだ観(み)る気にはなれねぇかもしれねぇが――」
「ありがとうございます! これ、ちょうど観たいと思っていたところなんです!」
カツオは大きな声で言い、ディスクを受けとった。
その顔には嬉しそうな笑みがひろがっている。
今度は星乃塚と霧山が目を丸くする番だった。
ふたりは顔を見合わせ、そして、安堵(あんど)の笑みを浮かべた。
星乃塚はカツオに向きなおり、言った。
「カツオ、思ったより元気そうだな。安心したぜ」
つづいて、霧山がカツオに向かって言う。
「カツオ、そのディスク、観終わったら貸してくれないか。あのスパーリングのとき、俺はまだ練習中だったから観ることができなかったんだ」
「そういうことでしたら――」
カツオは嬉しそうな笑顔で言った。
「いまから、オレの部屋で一緒に観ませんか?」
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