2019年1月19日土曜日

サークリングを封じるステップワーク(1)

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サークリングを封じるステップワーク



 カツオのほうは速いフットワークでサークリングをしているにもかかわらず、大賀烈の歩くようなステップに追いつかれてしまう――
 烈のその足裁(あしさば)きは『ショートカット・ステップ』だと星乃塚は言う。

 星乃塚は、ショートカット・ステップについて説明する。

「ショートカット――つまり近道だ。
 自分より速く移動している相手に追いつくには、それしかない」

「…………!」

 カツオは衝撃を受けた。
 そうだ、まさにそのとおりだ! と思った。

 星乃塚はつづけて言う。

「サークリングを使って相手の側面にまわり込む場合、1歩、2歩、3歩と複数のステップを踏む必要がある。
 相手との距離を大きくあけているときほどステップの数は多くなる。間合いが遠いと円周が大きくなるからな。

 サークリングをしている相手を、そのまま追いかけたら、なかなか追いつかない。相手が移動した道すじを追うだけだと、けっきょくどっちの脚(あし)が速いかの問題になる。
 だが、近道をするとなると、話はべつだ。

 たとえば、俺の対戦相手が高速フットワークを使い、俺の右側面にまわり込もうとしていると仮定しよう。
 俺の対戦相手は、1歩、2歩、3歩と、速いステップで俺の右側に移動していく。
 そのとき俺は、相手が移動しようとしている道すじを読み、右へ1歩、移動する。
 これで俺は、相手が移動しようとしている道すじをふさいだかたちになる。
 俺は、たった1ステップで追いついた――いや、追い越したことになるんだ」


「ああああ! そうだったのかぁぁぁぁ!」
 カツオは、天をあおいだ。
「わかってしまえば簡単なことなのに、なんで気づかなかったんだろう!」

「なかなか解(と)けない謎なんてそんなもんさ。
 わかってしまえば簡単なこと――本当の答えは、そういうところにあるのさ」

 カツオは、くやしさを噛みしめた。
 わかってしまえば単純なことなのに、いくら考えても気づくことができなかった。
 けっきょく先輩に教えてもらうことで、やっと答えがわかった。
 そんな自分の無知がくやしくてたまらなかった。

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更新
2019年2月5日 半角括弧による読み仮名の補足を1ヶ所追加。