2019年1月18日金曜日

烈のステップワークの正体

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烈のステップワークの正体



 カツオは一時停止を解除した。
 画面のなかでスパーリングが再開される。

 烈が構えを変えてから、カツオのパンチが当たらなくなる。
 がら空(あ)きのボディを狙いにいったとき、あやうく接近されそうになった。
 モニターが『ボディ狙いは危険だ、接近されるぞ』と叫ぶ星乃塚の声を再生する。

 そこからのカツオは、狙いを相手の顔面に集中させるが、しかし烈の固いブロックにはばまれ、いずれもヒットしない。

 さあ、ここからだ!
 カツオは思った。
 大賀烈は、もうすぐあのステップを使ってくる。
 カツオは速いフットワークを使っているにもかかわらず、烈のゆっくりとしたステップに追いつかれてしまう――あのステップワークだ。

 画面のなかで、そのシーンが再生された。
 右へ、左へ、カツオは必死にまわり込もうとするが、まわり込めない。カツオがしだいに追い込まれていく。

「この足裁(あしさば)きは!」
 霧山が驚愕(きょうがく)の声をあげた。

 カツオは映像を一時停止にし、霧山に視線を向けた。
 カツオはまだ烈のステップワークの謎が解(と)けていない。あのテクニックを見てプロの先輩が何を思うのか、ぜひとも知りたかったのだ。

「霧山さんは、大賀選手のステップワークの秘密がわかったんですか!?」

「ああ……でもまさか、四回戦の選手がこれを使ってくるとは、さすがに意外だった」

「教えてください! なんでオレはまわり込むことができなかったんですか? まるでこっちは一生懸命走っているのに、ゆっくり歩いている相手に追いつかれてしまうような感じでした。どうしてあんなことが起こるのか、いまだにわからないんです」

「カツオ、それは、大賀選手の足裁きが――」

 霧山がそこまで言ったとき、星乃塚が横から割り込むようにして、
「ショートカット・ステップだからだ」
 と言った。

「なっ!」
 霧山は、悪事を目(ま)のあたりにした時代劇の主人公のような顔で星乃塚を睨(ね)めつけている。

 しかし、星乃塚にはわるびれる様子がない。
 得意げな顔のまま、カツオに「ショートカット・ステップ」の説明をはじめた。

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