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マスボクシング、スパーリング
片倉は、全身全霊で烈の指導にあたった。
だが、ひとつ大きな問題があった。
烈のスパーリングだ。
ボクシングジムでありながら、本格的にボクシングをやっている者は烈のほかにはいない。このような有り様であるから、スパーリングの相手がいないのだ。
マスボクシングは、片倉がみずから相手をした。
マスボクシングというのは、対人の技術練習法だ。
スパーリングとおなじように、防具をつけておこなうことが多い。
やり方は二種類ある。
ひとつは、空手の約束組手(やくそく・くみて)のように、動作を決めてそれを反復する、というものだ。
このやり方の典型がジャブとパリングの練習だ。
いっぽうのボクサーがジャブを放つ。
もういっぽうのボクサーは相手のジャブをパリング(払い流す防御)でよける。
この決められた動作を反復し、体におぼえこませるのだ。
ほとんどのボクシングジムで、最初に教える対人練習としてジャブとパリングのマスボクシングをやらせている。
もうひとつのやり方は、スパーリングと同様に両者が自由に動いてパンチをくりだすやり方だ。
しかし、スパーリングのようにパンチを強く当てにいかない。ライトコンタクト(かるい打撃)か、寸止(すんど)めのパンチを打つようにする。
パンチは強く当てないが、打つときは正確に的(まと)をとらえることを意識して攻撃する。
また、相手のパンチがきたら、しっかりと反応して防御することを心がける。
――ダメージを与え合わない状況での攻防をくり返すことによって技術力を高めることができるのだ。
しかし、スパーリングのようにパンチを強く当てにいかない。ライトコンタクト(かるい打撃)か、寸止(すんど)めのパンチを打つようにする。
パンチは強く当てないが、打つときは正確に的(まと)をとらえることを意識して攻撃する。
また、相手のパンチがきたら、しっかりと反応して防御することを心がける。
――ダメージを与え合わない状況での攻防をくり返すことによって技術力を高めることができるのだ。
片倉は、現役のころはスーパーフェザー級(約58.9キロ)で活躍したプロボクサーだった。身長は169センチある。烈より13センチも高い。
マスボクシングでは強いパンチを打たないとはいえ、これだけの体格差があると並(なみ)の選手ならまともに技の攻防などできないものだ。
しかし、烈には強靱(きょうじん)なフィジカルがあり、体格差をまったく苦にしなかった。
烈は、片倉が教えるテクニックを次々と吸収していった。
とはいえ、やはりマスボクシングだけでは充分とは言えない。
スパーリング(実戦練習)をこなさなければ、おぼえたテクニックを試合で使えるようにはならないのだ。
片倉は、近場(ちかば)のジムをまわって烈のスパーリング相手をさがした。
烈がスパーリングをやるときは、いつも出稽古(でげいこ)のようなかたちで相手のジムまで出向かなければならなかった。
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更新
2019年9月5日 挿し絵画像を改訂。