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カツオは、部屋のなかで悶々(もんもん)とした時間をすごしていた。
外の空気を吸えば少しは気が晴れるかと思ったが、何も変わらなかった。
それはそうだろう。家にいようが外にいようが、惨敗したという事実は変わらないのだから……。
カツオは、家のインターフォンが鳴ったのを聞いた。
特に気にはしなかった。母がでるだろう。
しばらくして、母の足音が近づいてきた。
部屋の扉がノックされ、扉の向こうで母が言った。
「カツオ。誠一くんがきてるわよ、須藤(すどう)くんって子と一緒に」
「えっ、誠一くんと賢策(けんさく)くんが!?」
カツオは驚き、部屋をとびだした。
玄関に、誠一と、アイドル顔のイケメン男子が立っている。
「誠一くん、賢策くん……こんな時間にどうしたの?」
カツオの問いに、誠一が答えた。
「なんだかカツオの元気がなかったからな。賢策に電話して、3人で集まろうって提案したんだ」
「誠一くん……」
「何があったのか知らないけど、カツオが落ち込んでいる姿を見ると俺たちまでへこんじまう。だから――」
そのあとに、元気だせよ、とか、そんなに落ち込むなよ、といった言葉がつづくと思い、カツオはおもわず身構えた。
いまのカツオにとって、慰(なぐさ)めの言葉はかえってつらい。
だが、誠一の口からでてきた言葉はちがった。
「だから、カツオと一緒に、俺たちも落ち込むことに決めた」
「えっ……!?」
カツオは驚き、言葉をうしなった。
誠一のとなりに立つイケメン男子が言う。
「ひとりで悩んだりするなんて水くさいよね。カツオが落ち込むときは、僕たちも一緒だよ」
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